マンション経営の信用性






今日ではユダヤ人をユダヤ教徒と呼ぶよりも、ユダヤ教徒をユダヤ人と呼んだ方が事実に近いマネーには国境がない。
母国を持たないユダヤ人が、家業の金融業を足場にヨ−ロッパ各地で銀行をつくり、銀行は国際的なシンジケートをつくり、銀行から周辺分野の証券や保険に進出し、欧米の金融市場をほぼ完全に制覇した。
それゆえ、「市場の論理」は「多国籍化したユダヤ資本の論理」であり、「ユダヤ資本の論理」は必然的に「無国籍者の論理」である。
一面では、無国籍、多国籍の論理であるゆえに、クールで、普遍的で、世界のスタンダードとなり得た。
ところが八○年代に、突如として日本の銀行が国際金融市場に躍り出て、世界の銀行ランキングの上位一三位までを独占した。
日本の銀行は欧米の「市場の論理」とは無縁の「土地本位制度」を独自に構築して、急成長を遂げた。
土地本位制度は、担保となる不動産相場が上昇する限り、資金量が自動的に増幅する、きわめて効率のよい金融システムである。
故国を持たず、それゆえ領土を持たないユダヤ人にとっては、真似ようとしても真似ることができない金融システムであり、「市場の論理」のまさに対極にあった。
そこで、ユダヤ資本の反撃が始まった。
彼らは一九八八年の中央銀行総裁会議において、国際業務を行う銀行は八%以上の自己資本比率を維持せよ、というBIS(国際決済銀行)基準を設定した。
狙いはもちろん、日本の銀行の資金量の制限にあった。
当時、日本の銀行の多くは、貸出し残高に対する自己資本比率が、八%を大幅に割り込んでいた。
日本の銀行は八%の自己資本比率を維持するために、資本金を五○%増やすか、貸出しを四○%圧縮するかという選択を迫られたのである。
日本の銀行は連続増資によって、自己資本を急増させる拡大均衡を選んだ。
いまにして思えば無謀であるが、当時はバブルの最盛期であった。
「二一世紀は日本の世紀」という壮大な日本人の夢の先頭に立っていた銀行には、貸出しを圧縮して縮小均衡を図るという発想がまったくなかった。
積極果敢な連続増資が始まった。
当時は、一回の増資で発行できる株数は、最大にしなければならない。
株価を高くするためには需給関係をひっ迫させればよい。
需給関係をひっ迫させるためには株式の持ち合いを進めて、浮動株を一掃すればよい。
銀行は株式持ち合いをどんどん進めたから、全上場株式の二○%を支配する大株主になった。
これが一○年後の今日に禍根を残した、株式持ち合いの原因である。
株式持ち合いの歴史とプラス、マイナスここで株式持ち合いの歴史的な経過に触れておこう。
日本は戦後、敗戦の廃虚から立ち上がった。
食料、消費材、生産設備を含むすべての物資が欠乏していた。
つくれば売れたが、設備をつくるための資金も枯渇していた。
敗戦とともに財閥は解体され、粉々に分割されて、財閥の名前を冠することも禁止された。
大銀行は、財閥グループの主要な取引先を失ったから、優良貸し出し先を確保するために、株を買うことによって、財閥グループに代わるメーンバンク制度を構築した。
銀行はメーンバンクを拡大することによって、シンジケートの拡大を競った。
企業のサイドでも、銀行にコネをつくって、資金調達ルートを確保することが至上命題であった。
進んで銀行の株を買い、シンジケートに参画した。
株式の持ち合いはメーンバンクを中心とするシンジケートの証明となった。
アメリカは、一九二九年に始まる大恐慌の反省から、銀行の持ち株による取引先支配を法律によって禁止した。
ドイツには銀行の持ち株規制はなかった。
ドイツ銀行は、外国企業による買収を阻止するために、フォルクスワーゲンの株式を最大三○%保有していた時期がある。
当時の大蔵省は、銀行による株式支配の弊害を未然に防ぐために、銀行の持ち株を制限し、現在は最大で五%となっている。
企業は資金不足の時代が終わっても、買収や乗っ取りを恐れて、安定株主を維持するために、メーンバンクの数を増やそうとした。
メーンバンクを一行ではなく二行に増やせば、五%ずつでも一○%の安定株主ができたのである。
八○年代の終わりになると、銀行はBIS基準に対応するために増資を連発した。
銀行もまたメーンバンクの壁を越えて、株式持ち合いの対象となる企業を、質量とも無制限に拡散していった。
ところが株式持ち合いは、銀行に予期しない効用をもたらした。
BIS基準は保有株式の含み益の五○%を自己資本に繰り入れる特例を認めていたが、持ち合った株式の株価が高騰して、大きな含み益を創造したのである。
銀行に対抗して、企業も増資を連発した。
増資によって自己資本を調達し、創業以降初めて無借金となる企業が続出した。
企業もまた銀行との間で持ち合いを進めれば、投資有価証券勘定に含み益を創造することができた。
企業は増資を連発し、銀行借入れを返済していったから、銀行の手元に過剰流動性が集なかでも興銀、長銀、日債銀の三行は、巨大製造業に長期の設備資金を供給するために設立された銀行で、顧客に中小企業やサービス業を持たなかった。
巨大製造業は連続増資によって調達した資金を銀行に返済したから、特にこの三行には余剰資金があふれた。
三行は新たな貸し出し先を、不動産、デベロッパーに求めざるを得なかった。
長期資金を専門に扱う信託銀行も貸し出し先を失い、三行と同様に不動産業に融資を傾斜させていった。
これらの銀行はバブル崩壊の後遺症が特に激しい。
長銀、日債銀が倒産した原因にはこのような歴史的な必然性があったのである。
かくして余剰資金は不動産に集中し、バブルを限りなく増幅させた。
不動産が暴騰したために、副作用が次々に表面化した。
企業は設備のコストが急上昇し、サラリーマンは都心から閉め出されて、通勤時間一時間以上がザラとなった。
先祖代々の老舗は相続税が払えずに都心から排除された。
不動産の運用利回りは一%を割り込み、完全に投資採算を外れた。
不動産の投資目的は「さらなる値上がり」の一点に絞られていった。
バブルの極端な肥大化を放置した日銀、大蔵省の金融政策に非難が集まった。
行政がいったん金融引き締め策に転じると、今度は一転して窓口規制から総量規制へと、資金の流れを断ち切るほどの苛烈をきわめた措置が実施された。
不動産税制も、保有税の強化はもちろん、売買益に至ってはそのすべてを取り上げるほど、徹底的に強化された。
不動産相場の大暴落が始まった。
資金を断たれたのだから、一瞬にして不動産の買い手が消えた。
大口の投資企業は、どこも売り抜けることができなかった。
九○年代の一○年間に、日本の不動産の時価総額は一二○○兆円から二○○兆円へ、半減した。
株式の時価総額も七○○兆円から三五○兆円へ、半減した。
日本の国内総生産五○○兆円に比べて、日本が失った一三五○兆円の資産はあまりにも大きい。
不動産も株式も、個別に見れば一○分の一の大暴落はザラにある。
大暴落の直撃を受けた銀行や企業の後遺症は悲惨で、買い手がいないから底が見えなかった。
日本で金持ちや素封家といえば、土地持ちであったが、何代も続いた素封家も壊滅だ。
不動産相場が歴史的な大暴落をした担保不動産の大暴落によって、不良債権が銀行に集中して発生した。
同時に株価が暴落して、銀行は含み益を失った。
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